nobu_bob_talk 10 うれし! 恥ずかし! アマチュアナイトの巻(完)


アポロ劇場でのドキドキ体験の結末は……(その2)

さてさて、二回戦には首の皮一枚で生き残りました。せっかくのチャンスですから挑戦を続けたいと思う反面、NYを離れてしまえばアポロ劇場での演奏は、距離だけでなく、時間・金銭面で辛いものもあります。でも、二回戦終了後、初めてAmateur Nightを客席から見て自分もあそこでプレイしたんだと思ったり、劇場スタッフから次回はいつ出るの?と聞かれたりすると思いは募ります。帰国後しばらくモヤモヤした日々が続き、結局、あっさり、再渡米となりました。我ながらホントどうしようもないですネ。

丁度夏休みシーズンで航空運賃は予想よりはるかに高く、安いホテルは使う前からトイレが詰まっていたりと色々あったものの、全てを蹴散らしアポロ劇場へ向かいます。

劇場に着いてみれば、準決勝とあってイギリスからのTV取材も入り、楽屋の雰囲気も盛り上がってます。取材クルーの司会のお姉さんもコメディーでAmateur Nightへ飛び入り挑戦となりました。
ところが、これが厄介なことになったんです。そのお姉さん、出番は最初で私の前でしたが、小話をしてもサッパリ受けません。二つ目の小話が終わった段階(始めてから一分も経ってなかったと思います)でブーイングが倍増し、退場サイレンが鳴ります。ここで、ピエロにステージから追い出されるのが「お約束」です。が、彼女は何を思ったのかマイクにしがみ付いて離れません。バンドが退場マーチのボリュームをガンガン上げても、彼女はステージ上で何か叫んでます。楽屋のスタッフは大慌てです。最後はデッカイ用心棒をステージに投入して、抱きかかえるように彼女をステージから引き摺り下ろしました。
実は、楽屋からステージは殆ど見れないので、その時は事態も良く把握できてませんでした。楽屋でスタッフ同士が大声で指示を出し合って混乱している中、プロデューサーに背中を押され、ドサクサのステージへ、不安を抱えながら、ひょっこり登場することとなったんです。騒然として余韻消え去らぬ客席からは、演奏前なのに笑いとブーイングが飛んできます。しかし、アメリカ生活約5年で、面の皮だけは厚くなりました。釈然としないステージは何回も経験してます。なかばヤケクソで雄叫びを上げながら吹くこと3分間、ブーイングを完全に退治しました!

でも、ステージ最後の順位決定では、上位4位以内に入ることはできず、ここで今回の挑戦は終わりました。残念です!

いつも小さなライブハウスの片隅で演奏していましたので、自分だけにスポットのあたるHarlemのアポロ劇場での演奏は、至福の一瞬でした。ホント、久しぶりに心臓が口から取び出るほど緊張し、そして、声援その他もろもろを全身で楽しむことが出来ました。最初楽屋で、”No Gun on Stage”(ステージへのピストル持込み禁止)と言う張り紙を見てビビッテましたが、良く見ると、ホントは”No Gum on Stage”(ステージ上でのガム禁止)でした。それ程緊張してたのかもしれません?? 帰りの地下鉄では見に来ていたお客さんから冷やかされ、うれし、恥ずかし、Amateur Nightでした。演奏の後、楽屋でタップの練習をするピエロ役のコメディアンが足を止めて静かな声で、「お前のプレイは良かった」と言ってくれた時や、NY最後の夜、ホテルのTVでVH1(ミュージックTV)を見てるとMichael Jackson物語をやっていてAmateur Nightのシーンが出てきた時には、ちょっとジンと来ました。

 


さて、このAmateur Nightには、日本人もボチボチ参加しています。
Auditionを受けずに出場する方法もあるみたいですが、まずは長蛇の列に並べば、誰にでもチャンスはあります。

そう、次に挑戦するのは あなた です!!